音響機材の制約がとても多い演劇のステージにおいて、音の面でも、使い勝手も、最高のパートナーとなってくれています。
演劇舞台
20年以上にわたって、演劇の舞台プランニングを国内外で手がけている佐藤こうじさん(Sugar Sound/株式会社シュガーサウンド代表)。マールのスピーカー歴は「MJF6」から始まり、いまや計二十数台を運用する佐藤さんに、演劇という特殊な現場でマールを選び続ける理由を伺いました。
導入者プロフィール
氏名: 佐藤こうじ 氏(Sugar Sound/株式会社シュガーサウンド 代表)
キャリア: 演劇の舞台プランニングを主軸に20年以上のキャリアを誇る。オペレーションはチーム内・外部に委託する分業体制。企業案件の生配信・収録、劇伴、レコーディングにも対応。日本舞台音響家協会会員。
活動エリア・規模: 東京(首都圏)を中心に、地方公演や海外での演劇公演も多数手がける客席キャパ700〜800席規模までの劇場現場が中心。
専門性: 2010年より全国で舞台スタッフ向けの音響ワークショップを開催。Smaartを用いたスピーカーごとのディレイ設定、タイムアライメント、音の定位の作り方を指導する。

佐藤こうじ氏(Sugar Sound)
使用中のマール製品

照明バトンの間に吊り込まれたスピーカー(MJF6/6.5インチフルレンジ)。演劇では、これが標準の設置になる
繊細な音作りが要求される演劇の現場にぴったり。
私が手がけることの多い小劇場でのステージでは、舞台美術の配置と役者の動線が最優先となります。そのため、スタンド立てを含めて、スピーカーを床に置けることはまずありません。必然的に、イントレやトラス、バトンに吊ることが前提になる。だから私は、基本的に吊れないスピーカーは買わないと決めています。
また会話劇では、セリフの明瞭度がもっとも重視されます。舞台中央より後ろの奥側上空に、基準になるスピーカーを吊ることが多いのですが、それは何にも邪魔されずに客席に音を飛ばすため。この基準スピーカーの音が良くないと、すべてのセリフの明瞭度が下がって、音作りそのものが難しくなります。
以前はQSCのEシリーズを10インチから15インチ、サブまで一式で使っていました。ただ、アイボルトで吊って狙った角度をつけるのが重くて面倒で、買い増しには躊躇していました。業界標準のEV SX300は、10年も20年も流行が続いていて、演劇関係者は誰もが持っている。だからこそ、みんなと同じは嫌で、何か新しいものをずっと探していました。
マールスピーカーを知ったのは約5年前ですね。コロナ禍を経て劇場では最前列に客席を入れない時期があり、そこにリップフィルのスピーカーを置いていました。その用途に合う6インチクラスの木製スピーカーが、市場のどこにも売っていなかったんです。大手が出している手頃な価格帯のプラスチック筐体機もありましたが、音質に満足できませんでした。

舞台前縁に並ぶリップフィル(MJF6)。客席最前部を補う
その頃に、東京のとある小劇場で開かれたスピーカー試聴会で、初めてマールの音を聴きました。「16F」は、その用途にぴったりでした。「音もとてもいい。これだ」と、そこですぐに6台を買いました。こだわりの木製でコンパクト、形も良くて使いやすい。横吊り用のネジ穴も特注で開けてもらえました。吊れること、という私の絶対条件を満たしたうえで、とにかく音が良かった。それが始まりです。
使い込んでわかった、現場での実力。
MJF6/20S ―― ハイが伸びて、上から「降ってこない」。
マールのスピーカーは、ハイの伸びが素晴らしい。かなりハイ上がりの特性です。演劇の現場では、これが効果的です。天井高8〜9mのはるか上空に設置して、そこから舞台の中心を狙っても、音がしっかり客席に届く。喫茶店の環境音のような場面でも、音が「上から降ってくる」不自然さがなく、舞台全体に自然に広がるんです。EQで特定の帯域を持ち上げる必要がありません。
ハイ上がりといっても、いわゆるドンシャリではない。ローも適切に、綺麗に出ています。会話劇でいちばん大事なセリフの抜けと明瞭度を、この特性が支えてくれています。これも、とことんこだわった木製エンクロージャーの鳴りだからこそだと感じます。
奥側の基準スピーカーをマールにした場合、その手前のサイドや、プロセニアムに吊るL・C・Rもすべて同じマールで統一した方が、音の繋がりが良くなります。計7〜8台を同時に使う現場もあります。「MJF6」も「20S」も軽量なので、ハンガーのネジを締めてバインド線で簡易的にテンションをかければ、45度程度の大俯角の「曲げ吊り」まで実運用できました。これは重い従来機では難しかったことです。
もうひとつ、運用コストの面で大きいのは、システムコントローラーが要らないことです。同クラスの海外ハイエンド製品は、メーカー指定の専用プロセッサーや専用アンプを入れないと本来の力が出ません。マールは手持ちの汎用アンプでそのまま鳴らせて、調整もしやすい。シスコンへの追加投資が不要というのは、トータルの費用対効果として相当に大きいです。

高所トラスから角度をつけて吊ったMJF6

体育館でのイベント現場。使用スピーカーはすべてマール製「MB112」「20WS」
同じ舞台音響に携わる、あなたへ。
繰り返しになりますが、演劇のステージでは、美術の前にスピーカーをドンと置くことはできない、そもそも客席からスピーカーが見えて良いわけがない、という制約があります。
BD-Top(ブルードラゴン) ―― 客席に見せずに仕込める、細いコラム型
そこで、トラスや美術の枠の中に仕込める細いコラム型として、マールのコラム型「ブルードラゴン」のTop(「BD-Top」)を2台買って、スタンドに挿して使ってみました。パワードのコラムにありがちな、ボトムから電源と信号を長々と引き回す必要がなく、コラム単独にスピコンが直接挿さる仕様も現場的に優れています。何より、鳴らした瞬間に次元の違う音が響いて、マジで良かったですね。それを見た知人の演出家も「このスピーカー、すごくない?」と一瞬で気に入っていました。
マールスピーカーの知名度はFacebookのPA研究会を中心に確実に広がっていますが、実際に持っている人は小劇場界隈ではまだ少数ですね。私は頼まれもしないのにマールのスピーカーをいろんな人にすすめていて、「マールサウンドの営業マンだ」と公言しています。例えば地方の現場に行ったときに、現地の音響スタッフに対して、わざわざピンクノイズやホワイトノイズを出してマール製品のデモをするくらいです。聴いた人の反応は絶対に良くて、機材更新のタイミングには候補に入れてくれていますね。何より価格が手ごろだし。ほんと、一度聴いてもらえば価値が伝わるのは、スピーカーとしての力量があるからだと思いますね。
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